小野不由美さんという方は、『屍鬼　上・下』（新潮社・単行本）などの作品により、最近注目されている作家です。『十二国記』というファンタジーの形式を取った小説はいわゆる少女小説というマイナーな分野で発表されたにもかかわらず、幅広い年代層に読まれ 大変な人気を獲得しています。この「十二国記」は、講談社ホワイトハート・講談社文庫の両方で読むことができます。
物語は、平凡な高校生の陽子が魔物に追われ異世界に連れていかれるところから始まります。しかし、ファンタジーにありがちな異世界への逃避では終わらない物語です。ファンタジーとしてだけでなく、ミステリーとしても成立する物語なのではないかと思います。元がＸ文庫からといって、読まないでいるにはあまりにももったいない。

　主人公が高校生であることに初めのうちは学生を卒業された方々には違和感があるかもしれません。物語のところどころに嵌め込まれた「自分探し」の主題にも、はじめはなじめないかもしれません。しかし、読み進みつれ物語の世界に引き込まれることは請け合います。
　まずは、新潮文庫の『魔性の子』または講談社文庫（または講談社Ｘ文庫）の『月の影　影の海（上・下）』を2冊いっしょに 手に取って、絶対最後まで読みきってください。上巻だけでやめないでください。
　（講談社文庫の帯、あらすじにはときどき本文の筋とのずれが見受けられます。また、新刊はまず、講談社文庫で出版され、その後Ｘ文庫で出版されます）

　さて、十二国記の解説はこのあたりにしましょう。十二国記について詳しく知りたい方は、Yahooなどの検索エンジンで 検索をかければ、解説ホームページがいくつも見つかります。でも、ここで時間を割くよりはさっさと読んでしまうべき。

新潮社文庫から『東亰異聞』という本もでているので、 そちらを読むのもいいかもしれません。 もう一つの東京を舞台にした少し格調高い物語です。 明治という時代のあやふやな混沌とした雰囲気が伝わってきます。後でじわりと怖くなってくる後味のよい甘美なホラーです。しっとりとした狂気をお楽しみください。

同じくホラー、『屍鬼　上・下』（新潮社・単行本）は、ホラーとしての怖さだけではなく、逆転の怖さを感じることのできる小説です。テーマは序文等によって明らかにされていているらしく、テーマについてネタばれしても面白く読むことはできると思うのですが、やはり、無心に読んだ方が怖いと思います。上下巻とは思えないほどの分厚い本ですが、一気に読んでしまいました。

十二国記とならぶシリーズものとして、悪霊シリーズがあります。こちらは、ティーンズハート文庫で、基本的にＸ文庫よりさらに低年齢層がターゲットです。しかし、悪霊シリーズはお金を払うのがもったいないような幼稚な文章の多いティーンズハートにおいて異色の存在です。刊行当時にあったＸ文庫の規則の通り主人公の一人称が使われ、文体はターゲット層の読者の年齢に合わされていますが、文体さえ気にしなければ、良質のミステリィの感動が味わえることを保証いたします。

　ファンの間で良く知られていることですが、小野さんはかつて京大ミス研に所属されていて、その文章構成には推理小説的手法を感じることができます。ですから、悪霊シリーズにチャレンジされる方はできれば刊行順に読んでください。推理小説を最後のページから見るという方を除いて悪霊シリーズより先に「悪夢の棲む家」を読むことだけは絶対避けてください。
 
 
 
 

注意：ＦＴ：ファンタジー・ＷＨ：ホワイトハート・ＴＨ：ティーンズハート
 
 
 
 

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